「静かなインストゥルメンタルCDのジャケットを描いてほしい」 本作品は、そんな音楽関連の制作会社からの依頼を想定して、斎賀時人氏が描いたものです。深い緑の中に静かな時間が流れる、青年の隠れ家を描きます。
ここでは斎賀時人氏へのインタビューを通じ、どのようにしてこの構図・要素・仕上がりを目指していったかを、紐解いていきます。
穏やかで落ち着いた、部屋の中で寛ぎながら聴きたくなる音楽
今回インストゥルメンタルのCDジャケットという依頼を想定した制作でしたが、このテーマをどのように解釈してイラストに落とし込んでいきましたか?
斎賀時人:本来の案件であれば、作曲者や収録曲からその世界観に見合ったイラストの構想を練っていきます。今回は「穏やかで落ち着いた、部屋の中で寛ぎながら聴きたくなる音楽」を想定し、そこを起点に制作を始めました。
具体的な国や土地を思い浮かべたわけではありませんが、窓の外に木々や丘が見え、鳥や虫の声がすぐ傍から聴こえてくるような家が良いと思いました。
街の喧噪の中でなく、自然に囲まれた穏やかな場所が今回の作品に相応しいと感じたからです。現代の設定でありつつも、青年が古いものを愛し、長く丁寧に使っていることが感じられるよう心掛けています。
J.C.ライエンデッカーの技法から学ぶ
全体的に、着色の仕方が絵画美術に近い、特徴的なものに感じます。 何かベースとなっている技法はあるのでしょうか?
斎賀時人:私は、100年程前にアメリカで活躍したイラストレーター、J.C.ライエンデッカーの技法を研究していました。アナログ画材の作画技法を参考にしている為、ツールがデジタルであっても絵画美術に近い風合いとなっています。
全体の配色に際して、統一感を出す上で常に意識していることがあれば教えて下さい。
斎賀時人氏:ベースカラー(今回はアイスグリーン)を家具や小物にも反映し、色を馴染ませながら着彩することで同一空間に存在する説得力を持たせます。
人物描写については、人物の設定が先行して存在するのではなく、部屋や空間の描写と同時に人物像を作り上げていくことが多いです。人物は部屋の一部であり、部屋は人物の一部です。特に自主制作の場合はその傾向が顕著になります。
ジャケット以外の販促物への使用を前提とした構図の工夫について
斎賀時人:ジャケットは正方形のため、絵の中央に腰掛ける青年の傍に猫や楽器などの大切な要素を纏めました。その上で、サイトバナーなどの用途で横長にトリミングされても映えるよう、観葉植物や小物を配して見所を作っています。
斎賀時人 1989年生まれ。兵庫県在住の作家・イラストレーター。 嵯峨美術短期大学・非常勤講師。 WEBを中心に作品発表を行う傍ら、書籍の装画等を手掛ける。 |
聞き手:MakingLaBo編集部
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